しっくい丸シートがユニークなのは、表面を印刷できるだけでなく、色鉛筆やクレヨンで着色でき、漆喰の消臭、抗菌などの機能も失われないことにある。今年9月、T電力会社が参加したイベント会場で、このしっくい丸シートを使った「ぬりえ」素材が3種計500枚、関西ペイントによって無料提供された。子供から大人まで楽しめるぬりえを、イベントブース内で楽しんでもらい、さらに塗り終えたシートを持ち帰ってもらおうという趣向だった。しっくい丸シートをぬりえ素材として提供する試みは初めてであったが、ブース内で楽しく着色していく人に加え、それを持ち帰って塗りたいという人も多く、2日間のイベント期間中にすべての枚数が配布し尽くされた。きれいに塗り終わった作品は、家庭のインテリアにもなり、またシート本来の漆喰効果を発揮してくれるという二重の効用がある。編集部がシック丸シートに着目したのは、天然素材である漆喰を身近な商材に仕立てた関西ペイントの発想と、シートそのもののそうした実用性と可能性にあったのである。

ちなみに、関西ペイントでは最近、もう一つユニークな商材を開発している。越前和紙に漆喰を塗布したもので、和紙独特の風合とともに漆喰効果を併せもたせた素材である。実は、前述した西国三十三所の「オリジナル漆喰コーティングシート」の姉妹品として、この素材を使った「西国巡礼地図・3年カレンダー」(A2変形サイズ)が商品化され、インターネットなどを通じて販売されている。また、越前和紙を使ったこの素材は、壁に貼るばかりでなく、工芸品としての用途も広がっていくことが考えられる。実際に、漆喰和紙を使って胡蝶蘭のアートフラワーが試作されており、今後は折り紙などでも漆喰和紙のニーズが出てくるかもしれない。

漆喰は古来、日本人の暮らしの中にある身近な建材であった。その漆喰が再評価され、さらにはシートとして手軽に扱え、しかも用途に幅もある商品が開発された。アイデア次第で注目が集まるであろう漆喰シートの今後が楽しみだ。〈月刊「電気現場」2018年12月号より抜粋〉